フトアゴヒゲトカゲのでんちゃんは他院にて排卵の注射を行い、たくさんの排卵を行いましたが、まだ数的に残っているとのことで来院されました。
その他体重の減少から骨張っているのと、右手の効きが悪いという症状も出ていました。
レントゲン検査とエコー検査を行い4つの卵を確認しました。
しかし、卵以外に下腹部に硬い塊が触知されました。レントゲンやエコー上でも何かしらの塊としか分からないことと、1週間を追うごとに卵付近が非常に硬くなってきたこと、
また、本人の状態が悪化し、ご飯を吐き始めたことから試験開腹を行うこととなりました。
注射麻酔から、挿管を行いガス麻酔で維持しました。
(参考;注射麻酔|scアルファキサン6mg/kgミダゾラム1mg/kg)
(参考2;ガス麻酔|イソフルラン3〜5・肺吸気圧5hPa・5回/分)
(参考3;局所麻酔キシロカイン傷口滴下)
正中には静脈が走っているので正中から1cmほど左にズラして大きく切開しました。
黄色くなっている部分の奥側に腸が上部の腹膜に癒着しているのが見られました。本来腸管は腹腔内を自由に動けるものなので、この時点で腹膜炎と判断しました。
下腹部にあった原因不明の塊を摘出したところです。
結果、卵管内部にあった卵材でした。卵管内に卵内部の成分が広がっておりそれが原因で卵管炎と腹膜炎を起こしていました。
卵管の組織への癒着が激しく、肝臓にも癒着があったので、摘出することは不可能と判断し卵を取れる範囲で摘出して閉じることとしました。
これが摘出した卵です。卵周囲に固まった黄身と思われるものが付着しています。
卵管の切開部分、腹膜を連続縫合を行い、単純結紮にて皮膚を縫合しました。OPE時間を150分となり、覚醒までさらに150分を要しましたが、なんとか覚醒してくれました。
その写真がこちらです。
喉に嘔吐物が貯留していたのでその摘出も行いながら、なんとか自発的に呼吸することができるようになりました。
重度の腹膜炎や腸管の癒着も見られたので、今後は長期の生存や食事自体も難しいとお伝えし、帰宅していただきました。。。医療用語で言うならば予後不良という判断です。
しかし2週間後。
なんと元気いっぱいで、流動食と乾燥ミルワームをガツガツ食べてくれているそうです。
まだ腸管の閉塞のリスクがあるので大きな固形物は避けて給餌していますが、ここまで元気になるとは思いませんでした。デンちゃんの力強さには驚かされました。今後もどうなるかは分かりませんが、ここまで元気になると思っていなかったので感動しました。
卵管内をきれいにしたのがよかったのか、抗生剤を2種類使うことで腹膜炎が落ち着いたのかは分かりませんが結果本当に良かったです。
今後も長生きしてくださいね!がんばれ、でんちゃん!!